この章では、Plesk 9 以前のバージョンから Plesk Onyx にアップグレードしたユーザを対象に、Plesk Onyx のビジネスモデルに加えられた主な変更点を説明していきます。

旧バージョンの Plesk ソフトウェア(Plesk 9 以前)と比べ、Plesk Onyx には以下のような変更点があります。

  • ユーザアカウント:Plesk Onyx には、クライアントアカウントとドメイン管理者アカウントがありません。ホスティングサービスの再販および自社ウェブサイトのホスティングを行う必要がある場合は、リセラーアカウントをセットアップする必要があります。ホスティングサービスの再販が不要で、自社ウェブサイトのホスティングのみを行う場合は、顧客アカウントをセットアップします。

    顧客は Plesk にユーザアカウントを作成することができ、これによって他のユーザが Plesk にアクセスしてウェブサイトやインストール済みアプリケーションを管理することを許可したり、メールサービスの使用を許可することができます。Plesk Onyx で顧客が Plesk へのアクセス用に作成できるユーザ数は無制限です。また、契約へのアクセス用に複数の追加 FTP アカウントをセットアップすることができます。

  • サービスプラン:Plesk Onyx には、リセラー、クライアント、ドメインのテンプレートがありません。代わりに、提供するサービス内容に応じてサービスプランを作成します。リセラーのサインアップには「リセラープラン」を、サービスを再販する必要がない顧客のサインアップには「ホスティングプラン」を使用します。プランの作成後に、リセラーアカウントまたは顧客アカウントを作成して、プランにこれらのアカウントを登録します。これにより、ユーザに必要なリソースが提供され、Plesk で作業を実行する権限が付与されます。

    最も重要な変更点として、サービスプランは以前の Plesk テンプレートと違い、最初にリソースをプロビジョニングするときに一度だけ適用されるのではなく、その後も紐付けが維持されます。従って、プランに変更を加えると、過去にプロビジョニングされたリソースおよび権限にもこの変更が反映されます。

    ホスティングプランに加え、「アドオンプラン」もあります。アドオンプランを使用すると、追加のリソースやサービスを顧客に割り当てることができます。

  • 契約:ドメインに代わり、マルチドメインホスティング契約が導入されています。顧客用にドメインを作成するのではなく、顧客にホスティングプランの契約を作成することになります。実際には、ホスティングサービスを契約してウェブサイトやメールをホスティングできるのは、顧客だけではありません。Plesk 管理者やリセラーも固有の契約を持ち、固有の目的のために使用することができます。

    契約は、サービスプランをベースに作成することも、手動で構成することもできます。

    Plesk Onyx で新しい顧客にサービスの契約を作成するときは、まず初めにドメイン名を指定します。顧客の契約は常にドメインに紐付けられており、ドメイン名、IP アドレス、システムユーザアカウントなどの属性で識別できます。すべての契約は、紐付けられたドメインに従って命名されます。この紐付けは恒久的なものであり、いかなる方法でも解除できません。つまり、契約間でドメインを移行することはできません。ただし、ドメインの名前を変更することはできます。

    1 つの契約の下で複数のウェブサイトをホストすることも、1 つの顧客アカウントに対して複数の契約を作成することもできます。

  • リソースの割当:旧バージョンの Plesk では、リソースはリセラーアカウント、クライアントアカウント、ドメインに割り当てられていました。Plesk Onyx では、リソースはリセラーとホスティングサービス契約に割り当てられます。Plesk Onyx の顧客アカウントにはリソースが直接割り当てられないため、顧客が購入した契約間でリソースを再配分することはできません。1 つの契約に割り当てられたすべてのリソースは、この契約内で作成されたすべてのウェブサイトによって共有されます。

  • **2 種類のパネル**(**サーバ管理パネルと顧客パネル)**があります。システムの管理や顧客アカウントとリセラーアカウントの管理は、サーバ管理パネルで行います。ウェブサイト管理、ホスティング機能、メールアカウントの管理に関連するすべての作業は、顧客パネルで行います。サーバ管理パネルには、顧客パネルへのアクセス用のリンクが用意されており、ここから顧客パネルにログインして、リセラーや顧客の代わりにウェブサイトを管理することができます。

  • サブドメイン関連ディレクトリの構成の変更:安全上の理由から、ホストされるサブドメインのコンテンツと構成は別々のディレクトリに保存されるようになりました。

    • /<VHOST>/<サブドメイン名> は、HTTP/HTTPS ドキュメントを格納するディレクトリです(これまでのバージョンでは、HTTP ドキュメントと HTTPS ドキュメントが別々に格納されていました)。
    • /<VHOST>/<サブドメイン>/<サブドメイン名> は、サブドメインの構成を格納するサービスディレクトリです。このディレクトリの内容は変更しないことを推奨します。

Plesk Onyx へのアップグレード後または移行後の変更点

Plesk Onyx にアップグレードまたは移行すると、アカウント、ドメイン、ユーザ、ドメインテンプレートが以下のように変換されます。

  • リセラーアカウントは変更なしで移管されます。リソースは、プランに紐付けられていないカスタム契約を用いてリセラーアカウントに割り当てられます。
  • クライアントアカウントは顧客アカウントに変換されます。アップグレードまたは移行が終了した後で、以下の作業のいずれかを実行して、新しいビジネスモデルに合わせてアカウントを調整する必要があります。
    • 旧バージョンでクライアントに割り当てられていたリソースを、これらに属する複数の契約に分配する。
    • 顧客をリセラーに変換し、既存の契約をリセラーに紐付ける。これが可能なのは、アップグレード前または移行前に顧客アカウントがリセラーに属していなかった場合のみです。
  • ドメインは個別の契約に変換されます。契約は、以前にドメインが誰に属していたかに応じて、管理者、リセラー、顧客のいずれかに割り当てられます。
  • ドメイン管理者アカウントはユーザアカウントに変換され、該当するドメインを所有する顧客に割り当てられます。
  • サーバ管理者とリセラーに属するドメインテンプレートはホスティングプランに変換されます。
  • リセラーテンプレートはリセラープランに変換されます。

以下は、ビジネスオブジェクトの対応表です。

旧バージョンの Plesk のオブジェクト Plesk Onyx のオブジェクト
リセラーアカウント リセラーアカウント
クライアントアカウント 顧客アカウント
ドメイン 契約(カスタム)
ドメイン管理者アカウント ユーザアカウント
リセラーテンプレート リセラープラン
ドメインテンプレート ホスティングプラン